■ORACULAR-WINGS■ |
オリジナル設定閲覧室
M9-SIL Ver.KnT《シルバーナイト》 |
M9-SIL Ver.KnT《シルバーナイト》
【1:概要】
次世代型試験ASであり、M9の次世代機現地検証実験用として、生産され始めた量産試作実験型「M9−international」を母体として作られた機体である。「次世代主力ASの基礎研究に比較的整備性と運用コストの良くなった輸出型M9を原型のM9の能力に戻して、各種検証に使っている」機体とも言える。
【2:開発計画の出発点】
第3世代型AS、M9《ガーンズバッグ》を誰よりも先駆けて開発に成功したのはミスリルである。
常温核融合炉パラジウム・リアクター、可視光線域まで隠蔽可能な新型ECS等、「世界の10年先を行く」とまで比喩される技術を持つミスリルにとって、技術開発速度による優位性は非常に重要なものであった。
M9の完成とは、同時にその次段階の技術開発の必要性が生まれることをも意味している訳である。
技術開発を重要課題と認識しているミスリルが、M9開発直後から、次世代型ASの開発研究に乗り出すことになったのは当然の流れと言えるだろう。
また、M9の量産化の見通しが立った時点で、M9という機体の短期間での陳腐化を避ける為の改修計画や、新装備への対応等、M9自体の改修計画が複数持ちあがる事になる。
これらの複数の開発計画を出来うる限りローコストかつ短時間で、しかし最大限の効果を狙う為、できうる限り流用できる機体は流用し、幾つかの計画を融合一本化し、同時複数を並列で処理していく形が取られることになった。
その1つがM9の輸出仕様である「M9−i」であり。それを流用してミスリル独自で進めて行った計画の1つが、《プロジェクト・シルバーナイト》である。
「M9−i」は、高次元の戦闘力のままのM9を輸出する事で、自らがコントロール出来ないミリタリーパワーの出現がありうるのではないかと恐れる米軍。
微妙な国際間に対して、政治圧力としてのカードを欲した政治家。
より強いASを、安く配備したい第三国。
それらの思惑が一致し、誕生したのが「M9−international 」輸出型、通称「M9−i」である。
「M9−i(クライアント国家記号番号)」の形で大別される事となるこの輸出型M9は、それまでの米軍の兵器輸出の流れと同様に、M9からいくつかの点を変更する形で計画が進められた。
パラジウムリアクター、マッスルパッケージ、出力はM9のそれのよりも小さいものとなっている。
これは、あまりに強力過ぎる兵器を輸出する事に抵抗のある、米軍上層部と議会の意向を汲み取ったものであるが、結果的には機体の取得価格とランニングコストを引き下げる事にもなった。
AI、レーダー等の電子装備も、より簡素化され、安価でありながら最低限必要な物のみが標準装備となっている。
ECS(不可視化装備)関連の装備は輸出先の国家に「ECS関連は間輸出不可」と言える程の大きな制限がかけられている。
標準の固定武装、装備については原型機からは全て撤去され、必要に応じたオプションでの実装という形を取っている。
これも、機体自体の取得価格を下げ、その輸出先での運用状況に応じて、特化、改修を安価かつ勘弁に行う事が主眼となっている。
ただし、「M9−i」が全ての面で原型機であるM9に劣るわけでは無い。
嵩張る電子装備や固定武装を下した為に、出力こそ低いものの、同等以上の機動性が確保されている。
また、ペイロードも原型機の2倍近い能力が確保され、輸出型に重要視される、より柔軟な運用も可能になった。
なにより、より簡易に整備でき、ライセンス生産が可能であるように、フレームやマッスルパッケージ、装甲材の素材、配置、形状までが全てリファインされ。整備性、可動率のアップと、ランニングコストの低下が計られている。
とはいっても、開発費自体が高騰してしまっては意味が無く、M9とのパーツの互換性自体は、基幹部分で95%以上、その他の部分でも70%以上が確保されている。
限定的ではあるがM9の性能を継承しつつ、比較的ではあるがコストを押さえ、バリエーション展開も容易で、可動率も高い。という機体に仕上っている。
その為、高額な軍事費に頭を抱える軍内部や、政治家から、「高額なM9の配備計画から、M9−iへ切り替えるべきだ」との声も上がっているらしい。
原型がある輸出型M9の計画は、漠然とした構想からくる次世代機開発計画よりも、短期間に終る事になった。
ミスリル内部でも「ミスリルでのM9運用コスト低減にも、輸出型M9の導入は考慮する価値はある」との上層部の判断から、試験的に数基がパラジウムリアクタ、マッスルパッケージ、ECSを含む電子装備を、原型M9に準拠するM9−Si(特別輸出仕様)に少数が改装されて配備される事となる。
Sは安直に「Special(特別)」特別改修の意味であり、ミスリル内部でのみ混乱を避ける為に表記されている。M9−Siには「現実にこの型が輸出される事はないであろう」、とまで言えるレベルでの改修が行われており、それまでのM9との運用面的差異はほとんど無い。
正式型式機体名では無い事も手伝い、この機体が運用される部隊内部では、特に区別されることなくM9として運用されているようである。
その有る程度完成した試作量産機に、次世代機開発計画の主軸であった幾つかの新機軸を試験的に導入する事は、輸出型M9のバリエーション開発に内包される事になる。また、輸出型M9の十分に用意されたペイロードキャパと機体の潜在能力の高さがそれを可能にしており、まさに適任であったとも言える。
こうして、次世代機開発計画の幾つかの計画と機材の検証試験機のベースとして、「M9−Si」が選ばれた訳である。
この計画により、基礎技術レベルの根本的な引き上げと、基礎装備の検証として製作されることになっ機体が、「M9−SiL」である。
Lは「Leader(先導者)であり、Leaf(計画の一葉)であり、Leafage(幾つかの計画の集合)である」という意味で、幾つかのバリエーションが計画立案され、既に可動状況にある機体も存在するようだ。
この中で《シルバーナイト》と呼ばれる機体は、汎用性と生存能力を追求したバリエーション「knfe」試作機(トライアラ)の事であり、機体コードは『M9−SIL Ver.KnT』。これが研究チームの間では語呂合わせの通称として《シルバーナイト》と呼称されているのである。
【3:研究開発コンセプト】
ミスリルの次世代機検証実験のうち、《プロジェクト・シルバーナイト》で検証されているのは以下のコンセプトに基づいている。
1:新型素材の装甲と装甲レイアウト変更による整備性の追及。
2:あらゆる作戦に対応可能にする為の装備研究。
3:上記ふたつのコンセプトにおいて発生する、超凡庸性の追求。
4:TAROSのラムダドライバ以外での使用における可能性の検証。
【4:開発経緯】
シェリダン・レ・ファニュ博士を総責任者として発動された《プロジェクト・シルバーナイト》は、当時ミスリルが採用していた最新鋭ASであるM9、その改修型輸出仕様M9−iをベースに開発が着手された。
まず、最初に着手されたのは新型装甲材の設計加工であった。なお、この検証及び設計は、M9の量産化決定時点から始まっている。数々の実験の結果、装甲には特殊セラミックス繊維やゲル装甲等を使用したチョバム(サンドイッチ)アーマーが採用される事となった。
これらの材質は新型装甲材としては十分過ぎる防御力を結果として残したが、生成コスト的には従来の数倍から十数倍という莫大なコストがかかってしまうこととなった。そのため、量産機としての採用は、装甲のコストダウンを図ってからという結論となり、量産型M9への採用は見送られる事となる。
シルバーナイトはこの装甲素材の使用を前提にデザインされた訳だが、それは、実際に生産機への使用を可能にするために、その問題点の洗い出しと技術の洗練化、低コスト化研究を1つの目標としているからである。
まず、装甲形状のデザインと骨格、基本構造が同時に検討され、その結果に従い、駆動系、火器完成システム、神経系とほぼ同時にリファインされていった。
骨格系はメンテナンス・生産製を上げる上で、部品数、組み上げ工数の是正を図るように改修されているという輸出型の利点を生かしつつ、その点がより洗練されるように工夫がこらされていく。
火器管制システムは、携帯火器の開発及び、マルチプルハードポイントシステムを採用することとなり、それにより多彩な武装が可能とした。
そして神経系には、機体制御の補佐としてTAROSが組み込まれている。これは、ARX−7《アーバレスト》に搭載されているTAROSとは別に、『ラムダ・ドライバ以外でのTAROSの可能性の検証』として実験的に搭載された。
実験機の完成とともに、小規模のテストを重ね、8月末時点でこの型のASは完成することとなる。
実験検証機として配備され更なるテストが課されられる事になるだろう。
既に試験プログラムは決定されており、9月より、完成された機体を用いて、ランバート・ランベル少佐及び、堅流葉桐大尉の2名のテストパイロットによって、様々な実験データの収集が開始される。
この実験は数ヶ月に及び、翌年1月に全ての実験が終了し、次いで実戦によるデータ収集のために、実戦に投入される事となる予定である。
【4:形状】