渋柿のSS講座(第7回)「プロットの作り方とその利用方法≪2≫」


 拍手が片手では出来ないように、言葉や文章も相手無しには成立しません。小説は―ここでの定義は、他人に見せて楽しませるもの、としますが―、その考え方の上で書かれているものだと、わたしは信じています。
 先週は、その考えに基づいて、読み手に伝えるべきテーマを決めよ、と言うところまでお話しました。今週は、プロットをどのように作ったか、をお話しすることにします。

 では、わたしがプロットをどのように作ったか、なのですが、物語の中心に持って来るクルツ・ウェーバーをどう使うか、から考えてみました。彼は狙撃が得意、ASが使える、といった特性があります。また、彼は、お調子者である、という面のほかに、もうひとつの顔が隠れているようです。
 わたしはそこから連想して、まず敵役に何がふさわしいかを選び出しました。彼の勤務先である、ミスリルの潜水艦トゥアハー・デ・ダナンは、東南アジアでも活動している事がわかっています。今回TDDの人々には、この地域で仕事をしてもらうことにしましょう。
 このお話の筋のほかに、クルツの心情に立ち入って、その過去に起きた出来事を想像し、物語の中で記しておくことにします。彼がミスリルにいる理由、彼と親しい女性とは誰かという疑問なども「過去に起きた出来事の想像」の延長で自分なりに答えを出してみることにします。
 物語の舞台や語るべき内容は、見えてきました。次に小道具です。
 敵役にはミスリルの装備に対抗できるものを与えてあげなくてはなりませんが、ラムダ・ドライバまで使わせる気は毛頭ありません。M9の12.7ミリ・ウラン弾ですら使わせるつもりはありません。とはいえ、これではM9とは勝負にならないので、代わりのものを準備しました。
 いろいろと調べてみましたが、アームスレイブ(M9やアーバレストを含む) は波長の短い電磁波を防ぐ事が出来ないようです。この点―この説明は省かせてもらいますが、もし詳しい説明が欲しい方がいらっしゃったら、メールでお願いします―を考慮して、波長の短いX線を用いた兵器を登場させることにしました。
 さらに、これを使うアームスレイブの名前です。既に作品で語られているものでもかまわないのですが、それでは面白くないので新しく考えます。色々な資料からスペックもでっち上げます。
 物語の舞台や語るべき内容、小道具も揃いました。組み合わせて作ったプロットがこれです。

 クルツ悪夢の目覚め>
 マレーシア、海岸沿いの戦場>クルツM9×R35戦闘シーン>フラッシュバック>
 クルツ、少年の記憶1>
 宗介の声>我に返る>Xレイ・ディスラプター(指向性X線兵器)>M9電子機器破壊、クルツ機行動不能>R35がクルツ機の鹵獲を計る>宗介、マオの援護で後退>R35はクルツ機の鹵獲をあきらめて退却>
 ミーティング>クルツとカリーニンの会話>クルツ、少年の記憶2>コルチャック先生>ウェーバー家を襲った不幸>クルツが戦いつづける理由>妹の写真>TDD首脳部、指向性X線兵器(Xレイ・ディスラプター)、及びR35に対する議論>テッサ、応急対策を指示>敵の情報が入る>
 TDD、敵を追ってスンダ(マラッカ)海峡へ>TDDの針路が敵に漏れている!(待ち伏せ)>海賊に扮した敵の爆雷襲撃>敵はR35とホバーユニット&魚雷艇>TDDの針路後方から接近>ASみたいな小さな目標に、魚雷やミサイルは使いにくい>使ってみたが、煙幕でかわされる、あるいはディスラプターで打ち落とされる>テッサ、TDDを浮上させ、艦上でのR35迎撃を指示>
 敵、Xレイ・ディスラプターでTDD攻撃するも、テッサがあらかじめ施した対策効果のため、通じない>M9艦外へ>R35と艦上狙撃戦>進路上に機雷群!>狭い海峡・浅い水深で逃げる場所がない!>クルツ、機雷群の狙撃を試みる>R35の妨害>クルツ、次々と機雷を狙撃し、破壊>弾切れ(弾詰まり)!>宗介機のライフルを貰う>最後の1つを破壊>TDD、狭隘部を突破>R35の追撃が終了>R35は退却>終幕

 少々長くなってきたので、プロットをどう利用したかについては、来週に持ち越します。
 渋井 柿乃介でした。


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